ふと新田主任に視線を向ける。
彼は遠くの席で、他の仕入れ先の人たちに囲まれている。
私の視線に気づいてほしくて、しばらく彼を見つめてみる。
すると彼は事情をわかっているかのように、すぐに私の方を見た。
堀口さんと小柳の大きな話し声と状況から、私の今の状況を察していたのだと思う。
困った顔を見せてみるが、主任は口元に笑みを浮かべただけで助けてはくれない。
むしろ私が困っている様子を、遠くから楽しんでいる。
「小柳くん、可愛い彼女がいるって言ってたじゃない」
「いますけど、弦川さんは女性として別格じゃないですかぁ」
「やだぁー、浮気者!」
「男はみんな浮気しますって」
「うちの旦那は浮気できるほどモテないわよ?」
「モテなくたって、願望はありますよ。浮気する男としない男がいますけど、願望は絶対ある!」
二人の会話がだんだん不謹慎になってきた。
小柳が絶対と言い切る根拠は不明だが、超絶美人の奥様のいる新田主任だって私と不倫しているのだから、私には真理に聞こえてしまう。
「そうなの? 山村くん」
堀口さんが再び山村に話を振り、油断していた彼は驚いて変な声をあげた。
「え? 僕ですか?」
話が私から逸れている今がチャンスだ。
私は二人の会話の邪魔をしないよう気遣いながら、ゆっくり腰を後ろに引いた。



