小柳の次に手を焼いているのは、古田所長だ。

所長は忘れっぽいところがあって、事務関連の提出書類をないがしろにする悪い癖がある。

「所長。先週納品していた分の伝票をまだ頂いてないのですが」

「ごめんごめん、忘れてた」

「請求書を発行したいので、今日中にお願いしますね。これ、未提出分のリストです」

「助かります」

毎月のことながら、彼のフォローをするのは大変だ。

まったく、所長なのだから所員の見本になるような仕事をしていただきたい。

所長を新田主任と代わればいいのに。

こんな人でも出世できるなんて、この会社の人事は大丈夫なのだろうか。

「あ、そういえば今思い出したんだけど」

私は彼がまた何か重要な書類の提出を忘れていたと言いだすのではないかと、身を固くした。

「今日って、飲み会だよね?」

「それかよ!」と言いそうになったけれど、私はギリギリのところで飲み込むことに成功した。