何もわからないふりをして首をかしげる。

山村は小馬鹿にするように軽く鼻で笑った。

「弦川さんは、彼の気持ちを弄んだ。少なくとも彼はそう思ったから、怒っていたんですよね」

「人聞きの悪いことをおっしゃいますね。私はただ、彼が誕生日をお祝いしてくれると言うから、ありがたく好意を受け取っただけなのに」

「問題はそこではなかったはずです。そのあと、別の男性と会っていたと」

「ですからそれは、先輩が」

「男は特別な感情でもない限り、女性の誕生日をふたりきりで祝ったりしませんよ。それくらい、あなたにもわかっていたでしょう?」

だから私が原口の気持ちを弄んだことについて言い逃れはできないと言いたいわけか。

どうして私が、あんたなんかに説教されなきゃいけないの。

今になって原口の肩を持つなんて、納得いかない。

「わかっていたとして、それが何なんですか? 私だって、彼に特別な感情がありましたよ。真剣にお付き合いを検討していたんです」

「まったくそんな風には見えませんでしたけどね」

山村はきっぱりと言い切った。

たった数回話しただけのくせに、わかったようなことを言わないでほしい。

いったい私の何を知っているというのか。

ただ悔しいかな、山村の考えは正しい。

私は原口の気持ちを弄んでいた。

口を結んだ私を、山村はさらに責める。

「男を騙して楽しいですか?」