「原口さん、ひどい……。今日だけじゃなく、あの日も尾けていたんですね」
「違うんだ、俺は」
私は泣きながら、さらに彼を追い込んでいく。
「嘘をついたのは認めます。渋谷で会ったのは昔お世話になった地元の先輩で、原口さんとお食事をしている間に誕生日祝いの連絡をくれたんです。たまたま近くにいるって言うから会いに行ったけど……私、何か悪いことしましたか?」
「いや、悪いことというか……」
「私、原口さんとお食事できてすごく楽しかったのに」
言葉に詰まる原口。
もう彼に勝ち目はない。
さあ、さっさと謝って帰りなさい。
溢れた涙をしおらしく手の甲で拭い、もう一度目に涙を溜める。
新たな涙を彼に見せつけるべく顔を上げた時、私は再び鳥肌を立てた。
原口の後ろに知っている男が一人、気まずそうな顔でこちらを見ている。
山村由貴だ。
よりによって、こんな時にこの男と出くわすとは、今日はとことんついていない。
私と目が合うと、山村は苦い顔で会釈をした。
店の前で繰り広げられている痴話喧嘩に口を出せず、でも私を無視することもできず、その場に突っ立っているといったところだろう。
山村に気づかない原口は懲りずに尋問を重ねる。
「でも、家族とケーキは嘘だったってことだよね?」
ああ、しつこい。
山村由貴。
この場に居合わせてしまったのが運の尽き。
この際だから、あなたを使わせていただきます。



