午前8時半、いつもの時間に出社。
「おはようございまーす」
私が勤めているのは都心の外れにある中堅商社の一営業所だ。
私はこれでも一応、そこそこの大学を出ている。
就職活動ではもっといい会社からも内定がもらえたけれど、私にとっては条件がよくなかったからお断りした。
この株式会社イズミ商事への入社を決めたのは、女子社員の数が少なく、平均勤続年数が長かったのが最大のポイントだ。
私は嘘つきだし、性格もよくないことを自覚している。
女に敵を作りやすいということも、理解している。
さらに、女子社員の勤続年数が長いということは、仕事を続けやすい会社だということだ。
私は男に媚びて生きていくけれど、男に縋って生きていくつもりはない。
寿退社を狙って短期的に勤務する予定はなかったから、給料はいいけど競争を強いられる会社より、給料が並でも余裕を持って長く働ける方が賢明だと判断した。



