「山村くんに、何か聞いたの?」
「はい。大体のことは」
私がそう答えると、主任は顔を歪めて舌を打ち、背もたれに体を預けた。
「真咲には近づくなって、言っておいたのに」
私たちは関係をやめたのに、なぜそんなことを言ったの?
尋ねたいけれど、今は優先的に進めるべき話が他にある。
「しかも、私についての無茶な条件を付けて取引しようとしたそうですね。どうしてそんなことしたんですか?」
あえて他人行儀な言葉を使った。
情に流されたりしないよう、あくまで後輩というスタンスを貫くために。
「無茶な条件って何? 俺は何もしてないよ」
主任はそう言って、白々しく笑った。
愕然とした。
彼は私に嘘をついている。
私は軽く深呼吸をして、背筋を伸ばし、言いにくいことを言うための姿勢を整えた。
「……あまり下手なことを言わないほうがいいですよ」
「え?」
「お二人の会話、聞きました」
「聞いた?」
新田主任の表情が曇る。
「山村さんはこれまでの商談や会話を、ボイスレコーダーに録音しています」
主任は目を丸くしてこちらに身を乗り出した。
「はあっ? 録音?」
「はい。私が聞かせてもらったのは、その一部です」
「一部……ね」
彼は乗り出していた体を、ゆっくりと背もたれに戻した。



