山村があの録音を使って動き出す前に、こちらも策を練っておく必要がある。
新田主任と話をしておかねばならない。
会社のメールだと証拠が残るし、携帯にかけたりメールしたりすれば彼の妻に勘付かれる可能性がある。
今まで通り、リスクは最小限に。
会社で仕事にかこつけ、直接話すのが最もローリスクだ。
そう思ってタイミングを図っているのだが、ここ一週間、主任が外出ばかりしていてなかなか捕まらなかった。
このままでは丸腰のまま山村を迎え撃つことになってしまう。
私は今日こそ彼と話がしたくて、終業時刻を過ぎて帰社した新田主任を待ち、すかさず声をかけた。
「主任、お帰りなさい。明日の商談で使う契約書のことで質問があるんですけど、今お時間いいですか?」
私はちゃんと明日新田主任が使う予定の契約書を手に取り、それを見せながら声をかけた。
怪しむ者は誰もいない。
「ああ、大丈夫だよ。荷物だけ置かせて」
「わかりました。先にミーティングルームで待っています」
呼び出しはナチュラルに成功した。



