「そういえば新田主任は家族で沖縄だって言ってたわね」
堀口さんの口から彼の名が出て、密かにギクッとする。
山村の録音を聴いて1週間と少し。
新田主任と山村が揉めた、というような話は特に聞いていないが、嫌な予感だけはずっとしている。
「沖縄かぁ。俺行ったことないです」
「私も若い頃に一度行ったきり。羨ましいわねぇ」
二人が暢気な会話を繰り広げていると、営業所の扉が開いた。
来客ではなく、古田所長が出先から帰ってきたようだ。
「所長。お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
重く神妙な顔をしている。
普段は締まりのない顔をしていることが多いのに、先日から眉間にしわを寄せばかりだ。
「内部監査の資料、準備できてますから印鑑くださいね」
所長は私の言葉には返事をせずに尋ねる。
「新田は?」
彼の名に、ふたたび私の胸が跳ねる。
「外出しています。店舗を3つ回ってくるとおっしゃってました」
「そうか。それじゃ戻るのは夕方だね」
「そのくらいになるのではないかと」
古田所長は深くため息をつきながら席に座り、かばんからノートPCを取り出した。
それを開いて少しだけ操作し、ふたたび私を見る。
「オリエンタル・オンの山村くん、今日ここに来た?」



