「あらあら、若い子は楽しそうねぇ」
私たちの会話に、堀口さんが割り込む。
山村とくっつきそうな私を小柳の魔の手から救うため、とでも思っているのだろうが、今は都合がいいので甘えることにする。
「堀口さんはご家族で何か予定があるんですか?」
私が話を振ると、彼女はうんざりしたようにため息をついた。
「うちは上の子が受験生で夏休みも毎日学校の補習だし、下の子は部活だから毎朝5時起きで弁当作り。おまけに旦那も休みだからお昼も作らなくちゃ。会社が休みってだけで、私は休めないわね」
母親って、本当に大変なんだなぁ。
子供たちと夫、そして飼っている犬の世話までやっている。
今日だってきっと朝5時に起きて弁当を作り、掃除や洗濯をしてから会社に来たのだろう。
もちろん生活のスタイルは家庭によるのだろうけれど、うちも家のことは母が何でもやってくれていた。
私に同じことができる気がしない。
やっぱり結婚なんてしたくないし子供なんていらない。
私の遺伝子を持って生まれる子供が可哀想だ。
堀口さんの話に、小柳が敬服してうなった。
「ほんと頭が上がらないですね。俺も母ちゃんに弁当作ってもらってたけど、当時は文句ばっか言ってました。たけど今、すごくありがたみがわかります」
「でしょう? 15日はお母さんに孝行してあげなさい」
「ははは、そうします」
私も、母に毎日弁当を作ってもらっていた。
いつも彩りが少ないとか文句言っていたけれど、今考えると本当にありがたいことだ。
やっぱり、今年は久しぶりに実家に帰ろう。



