「そんな幼稚なパワハラ、冗談でしょ。社会でそんな条件がまかり通るはずがないじゃない」
さっき山村がしたのと同じように鼻で笑ってやる。
しかし彼は軽く受け流すように紫煙を吐いた。
「書類上、イズミとオリオンは対等な特約店契約を交わしているかもしれない。でも実際は対等なわけじゃない。俺たちみたいな小さなメーカーにとって、イズミは大きな特約店だ。取引がなくなると打撃が大きい」
「何が言いたいの?」
「多少の理不尽にはできるだけ応えるようにしている。たとえそれがメチャクチャな要求でもな」
しかし、今回主任が出してきた要求は度が過ぎていると言いたいのだろうか。
あんなの、冗談に決まっているのに。
「それで、あんたは主任のメチャクチャな要求をどうするつもりなの?」
真に受けちゃって、馬鹿みたい。
「その条件は飲めないって即答したよ」
「……そしたら?」
「金輪際取引しないと恐喝された。俺は真面目に話そうとしたよ。でも……」
主任は聞き入れなかった。
なぜ?
過去に一度、あからさまに私と関係を持ちたがっていた男から守ってくれたことはあったが、山村を同じように見て私を守ろうとしてくれたのだろうか。
だけどそれにしてはスマートさに欠ける。
昼間のミーティングルームでの彼の行動は不可解すぎる。
関係は終わらせたのに、まるで私を求めているようだった。



