私は割れた足の爪を整え、左手の絆創膏を貼り直してから家を出た。
私がコンビニに着いた時、山村はすでに灰皿の横に立っていた。
「こんばんは」
白々しく声をかけると、山村は不満げに頬を膨らませた。
「遅い」
「待たせてごめんなさいね。会社でケガしたから準備に手間取っちゃって」
「ケガ?」
「あんたに出した麦茶のグラスが割れて、ざっくりと」
絆創膏を貼った手を見せつける。
「傷、大きくない? 大丈夫?」
山村が期待通りに表情を歪めたのを見て、満足を覚える。
彼を操ってやったという、小さな優越感だ。
「不便だけど死ぬわけじゃないし。で、話って?」
本題を促すと、山村は途端に真剣な顔つきになった。
しかしすぐには話し出さない。
よっぽど切り出しにくい話であるようだ。
「新田さんのことなんだけど」
……やっぱり。
私は思わず力んでしまい、傷がジンと痛む。
「主任?」
私は白々しく首をかしげておく。
何にも気づいていないという体の方が、警戒されないだろうと思ったのだ。
山村は真面目な顔のまま言った。
「あの人、マジでクレイジーだな」



