「真咲……」
ギュッと締められて苦しい。
「主任?」
一体何事かと顔を上げると、今度は唇を奪われた。
ここは会社だ。
誰かに見られてしまったら大変なことになる。
私は彼の肩を掴み、力いっぱい突き離した。
「主任、落ち着いてください! 何があったんですか?」
やはり山村が何かしたとしか思えない。
新田主任はふたたび椅子に腰を下ろし、力なく長机に肘をついた。
「ごめん。別れたのにこんなこと」
「一体どうしたんですか? 主任が取り乱すことなんて、これまで一度もなかったのに。山村さんと何かあったんですか?」
主任は深くため息をつき、握った拳を机に落とす。
「彼とは仲よくできると思ったんだけどね。あんな男だとは思わなかったよ」
その声は明らかに怒気を含んでいた。
彼は私にもう一度「ごめん」と告げ、自分の荷物を持ってミーティングルームを出て行った。
汗をかいた麦茶のグラスが二つ、照明を反射して虚しく光っている。



