そんなことより、新田主任がまだミーティングルームから出てこないことが気になる。
いつもならすぐにデスクに戻って、書類や資料を作ったりメールを打ったりするのに。
まさか山村のやつ、主任に何かしたの?
「私、ミーティングルームの片付け行ってきます。電話番お願いしますね」
「あっ、真咲ちゃん! まだ聞きたいことがあるのにーっ」
「それはまた今度!」
結果的に堀口さんの追求を逃れることに成功したが、本当に何だか嫌な予感がするのだ。
彼らが使っていた部屋の扉は、まだ使用中になっていた。
二回ノックをすると、低い声で「はい」と帰ってきた。
ゆっくり扉を開く。
部屋の中には着席したまま背中を丸めて頭を抱えている新田主任がいた。
「主任、どうされたんですか?」
私が声をかけると、ゆっくりこちらを向く。
眉間にしわを寄せ、目は血走っている。
こんなに余裕のない新田洋輔は初めて見た。
何か失敗でもしたのだろうか。
私は部屋に入りを閉めた。
うちのエースである彼のこんな姿を、他の部屋で商談をしている他社の人に見せてはいけないと思った。
彼がおもむろに立ち上がり、怖い顔のままこちらにやってくる。
「しゅに……」
呼び終える前に腕を強引に引かれ、私は彼の胸に抱きとめられた。
もうこんな関係ではなくなったはずだが、拒む隙も与えられなかった。



