キリのいいところまで終わったらティータイムという約束だったのだが、新たに来客が来たり所員に急ぎの仕事を頼まれたりして、なかなか落ち着くことができなかった。
イライラし始めたところで、ふわっと紅茶の甘い香りが鼻をかすめる。
「真咲ちゃん、頑張りすぎよ。いい加減ひと息入れなさい」
堀口さんは私のパソコンのキーボードを押しやり、熱々の紅茶が入ったカップを正面に置いた。
その横に小さなチョコレートを添え、にっこり笑う。
「適度に休憩した方が、作業効率も上がるんだから」
堀口さんはいつも、絶妙なタイミングで私を労ってくれる。
「そうですね。ありがとうございます」
温かい紅茶を飲むと、身体中がホッとした。
詰めて作業をしていたせいで凝り固まっていたみたいだ。
夏の休暇までずっとこのペースで働くわけだが、詰めすぎて自分が潰れてしまっては意味がない。
舟木と別れて休暇の予定はなくなってしまったけれど、私だって休暇は元気に楽しみたいのだ。
紅茶とチョコレートを美味しく頂き作業に戻ろうかという時、山村が一人で事務所にやって来た。
「今日はこれで失礼します」
えらく神妙な顔をしている。
新田主任はどうしたのだろう。
いつもなら二人揃ってミーティングルームから出てくるのだけど。



