−−コンコン
部屋にノック音が響いて我に返った。
「お待たせしました、新田です」
新田主任が入室すると、途端に部屋はビジネスの空気へと入れ替わる。
「それでは、私はこれで」
私は彼らの邪魔をしないよう、すみやかに部屋を出た。
どことなく胸が弾んでいるような感じがするのは、きっと気のせいだ。
事務所に戻り、自分の仕事を再開。
しかしものの数分で古田所長から呼び出しがかかった。
「弦川さーん」
所長は名刺数枚を眺め、珍しく眉間にしわを寄せている。
「どうされました?」
「これ、ファイリングしてもらいたいんだけどさ……」
「わかりました」
だけどいつもなら、堀口さんに頼んでいる仕事だ。
わざわざ私に頼むということは、何か気になることでもあるのだろうか。
所長はため息交じりに告げた。
「来月から担当の人がまた変わるんだよ。3社も」
「この時期に3社も? 最近本当に、変な時期にコロコロ変わりますね」
思えば山村がうちの担当になったのも、5月中旬だった。
「現担当の人、揃いも揃って辞めるんだってさ。うちの担当って大変なのかな。小売りとの板挟みになる商社に比べれば、メーカーの方が楽だと思ってたんだけど」
我々がそう思っているだけで、メーカーにはメーカーの苦労がたくさんあるのだろう。
私はこの会社にしか勤めたことがないから、想像すらうまくできない。



