色々聞きたいことはある。
何時まで飲んでいたのかとか、何か変なことを言っていなかったかとか。
一応記憶はあるつもりだけれど、自分が忘れていることがあるかもしれない。
「あんたがもう少し元気だったら、もっと楽しかったかもしれないね」
「どういう意味?」
「俺、女の部屋に上がり込んで何もしなかったの、初めてだったから」
「何もしなかった……?」
ぎゅっと抱きしめたのも、おでこにキスしたのも、“何もしなかった”に入るの?
ズンと胸が痛む。
昨日一日中思い出しては照れていた自分がバカみたい。
「無理させて吐かれても困るし、可愛く甘えられても手を出すのは我慢したでしょ?」
「なっ……!」
胸の痛みはどこへやら。
顔が一気に熱くなる。
そんな私を見て、山村はますます楽しそうに笑う。
「で、続きはいつしようか。俺としては、さっそく今夜でも大歓迎なんだけど」
「しないから! 絶対にしないから!」
からかう男。ムキになる女。
これから商談が行われるミーティングルーム。
私たちはただの仕入れ先と特約店。
だけどそんなことはすっかり忘れて、まるで教室でじゃれ合う男子と女子のよう。
私が密かに憧れて実現できなかった男子と女子のやり取りが、今ここで実現している。



