堀口さんには頼めない書類の作成や整理、来客のお出迎え。
入金の情報をシステムに打ち込んで領収証を発行していたら、また新たに来客がやって来る。
堀口さんが電話対応と雑務をやってくれていなかったら、きっと仕事が回らない。
「真咲ちゃん、そろそろ休憩したら? あったかい紅茶でも淹れましょうか」
私が休みなく動いていることに気づいた堀口さんが、心配して声をかけてくれた。
「ありがとうございます。もう少しでキリがいいところまで終わるので、一緒に飲みましょう」
今日は彼女にもたくさんの仕事をお願いしているのに、女神だ。
紅茶をモチベーションに面倒な作業も頑張ろう。
私が気合を入れたその瞬間、営業所の扉が開いた。
「失礼します。オリエンタル・オンの山村です」
彼の声に、私の胸が高鳴った。
今日彼がここへ来ることは、先週のうちからわかっていた。
出迎えは私の仕事である。
酔って醜態を晒した私にどんな顔を見せるのだろうかと、昨日からドキドキしていたのだ。
「お待ちしておりました。ご案内します」
「ありがとうございます」
余計なことは口に出さない。
しかし確かに一昨夜を思わせる、妖しさを含んだ笑みを浮かべている。
どうしておでこにキスしたの? なんて、こんなところで聞けるわけがない。



