部屋着を身に着け濡れた髪をヘアクリップで留めてベランダへ出た。
日を浴びながら酒を飲むのも嫌いじゃない。
たかだか3階から見える住宅地の景色は特段美しくはないけれど、あと1時間もすれば、西の空に真っ赤な夕日が見られることだろう。
近所の子供たちが走り回ってはしゃぐ声。
近くの幹線道路を通過する自動車の音。
遠くで鳴った電車の汽笛。
音はうちの窓に反射して、前から後ろから私を包む。
お前は孤独だと嘲笑っているように聞こえてしまうのは、心が荒んでいるからか。
「はぁ……」
ため息をつきながら視線を地面に写すと、小学生ほどの子供たちが路地を走って通り過ぎていった。
その後ろをスーパーの買い物袋を下げた主婦が歩いている。
帰って夕食を作るのだろう。
彼女の後ろを学生らしき茶髪の男の子が、そして彼の少し後ろを、黒髪の若い男性が歩いている。
黒髪の、やけに見覚えのある、若い男性が歩いている。
「……山村由貴」
彼の名を、小さく口に出してしまった。
私に気付くだろうか。
私はあえて声をかけることなく、存分に彼を観察しながらチューハイを飲む。



