「全部って、わけわかんねーよ」
舟木が動揺している。
いい気味だと思ってしまう自分の性格の悪さに笑えてくる。
「実家暮らしっていうの、嘘。本当は一人で暮らしてる。だから東京出身も嘘。“今何してる?”って連絡くれた時の返信も半分くらいは嘘。あ、私の誕生日の時、女子会やってたっていうのも嘘。本当は男と会ってた。ちなみに直くんは三番目の相手だったの」
一気にまくし立てると、彼は口をあんぐりと開けて唖然とした。
私、何を話しているんだろう。
こんな話、絶対にしちゃいけないのに。
だけど、私の8割を犠牲にしてでも、この男に報復したかった。
精神的にショックを与えて、落ち込ませたかった。
唯一無二の親友は、優越感のために付き合った彼氏よりずっとずっと大切なのだ。
ていうか、舟木だって付き合う前は高飛車な態度を好んでいたくせに、ここのところ貞淑な態度の方を喜ぶのは“高飛車なじゃじゃ馬を手懐けた”という優越感が欲しいからなのでは。
そう思い至ると、もう彼と付き合うことに何の魅力も感じられない。
「ごめん。直くんが好きになった嘘の私、もう演じられなくなっちゃった」
「嘘の私って……真咲は一体、何者なんだよ」
本当の私はブスで卑屈な嘘つき女だ。
「さぁ? 私も忘れちゃった」
「わけわかんねーって!」
「嘘つきでごめん。今までありがとう。さようなら」
私は彼に向けて深く頭を下げ、隠れるように雑踏へ紛れ込んだ。
最後に見た舟木の顔は、驚きと困惑と怒りと悲しみが混じった芸術的な顔をしていた。
きっと舟木にはまだ私が見えているけれど、追っては来ない。
それが彼の答えなのだ。



