「送ってくれてありがとう。またそのうち会社で」

私はそっけない口調で礼を述べ、逃げるように建物へと足を進めた。

ここは女性専用マンション。

私が招かなければ彼は立ち入れない。

「弦川さん!」

私を呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返ったり立ち止まったりはしない。

やっぱり山村とは関わるべきじゃなかった。

私たちは決していい関係なんか築けない。

部屋に帰って楽しいことを考えよう。

舟木に電話して、旅行のことを考えよう。

観光、温泉、グルメ。

まだ何も決まっていないけれど、8月がとても待ち遠しい。