ほぐれかけていた心が再び凍りついていく。

「……楽しむために嘘をついているわけじゃないから」

「だったらどうして嘘つくんだよ」

確かに初めは楽しむためだった。

けれど、今でも彼に嘘をつき通しているのは彼を傷つけないためでもある。

「あんたに関係ないでしょう?」

「弦川さん、本当にそいつのこと好きなの?」

ギクッとした。

舟木のことは好きだ。

だけど、燃えるように恋い焦がれているわけではないことも事実だ。

ただ一言「好きだよ」と答えればいいだけなのに、嘘に慣れているはずの私の口が動かない。

私の本音がノーであると解釈した山村は、深くため息をついた。

「結婚っていう話になったらどうすんの。一緒に生活しながら一生騙し続けるのは無理だろ」

私を好きだと言ったくせに舟木の肩を持つ山村に腹が立つ。

「結婚なんて、誰ともするつもりない」

「だから嘘ついていいでしょって? あんた本当に自分勝手だな」

誰のせいでこんな女になったと思ってるの。

そう言いそうになったのをグッと堪えた。

自分勝手なのはわかっている。

だけどそれを、あんたに非難されるいわれなはない。