「手を繋いでもいいですか?」
「ダメです」
「それじゃあ代わりに腰を」
「ダメです」
「せめて最後まで言わせてよ。冷たいなぁ」
「あんたが暑苦しいからよ」
こんなやり取りが嫌じゃない。
そっぽを向いてもめげずに構ってくる彼との間に「取引先の人」以上の関係が芽生えていることを否定できない。
「弦川さんって堅苦しいから、名前で呼んでいい?」
「ダメ。苗字で呼んでください、山村さん」
「えー。俺のこともユッキーって呼んでいいからさ」
「はぁ? 呼ばないし」
嫌じゃないというより、むしろ少し楽しく感じてしまっている。
舟木とおしゃべりしている時より、ずっと。
そんなのおかしい。
恋人より嫌いな男との会話が楽しいだなんて、絶対に間違っている。
舟木の顔が頭をよぎった時、バッグのポケットに入れていたスマートフォンが震え始めた。
舟木からの着信だ。



