こいつ、頭おかしい。
「好きになってよ」とか「付き合ってよ」と言うならまだしも、「勘違いさせてよ」とは意味がわからない。
「何それ。誰得?」
「俺得。勘違いできたら、もっと強気にグイグイ攻められるから」
「今でも十分強気だと思うけど」
もっと強気になったら、一体どのくらいグイグイ来るつもりなのだろう。
電車が一緒になっただけであれほど私を翻弄できるのだ。
本気になったらどうなるのか、想像もできない。
「まだ本気出してないのに」
「出しても無駄よ」
「ちぇー」
山村との会話は、思いの外弾む。
ついさっきまで公園にいたのに、いつものコンビニに到着するのがあっという間に感じる程度には夢中になって話してしまっていた。
山村の術中にまんまとはまっているような気がして悔しい。
「家、ここから近いんでしょ? 送るよ」
彼のこの申し出に、「しまった」と思った。
そう提案される可能性を想定していなかった。
「いい。近いし」
それに、家の場所を知られたくない。
「あ、もしかして警戒してる?」
「……まあ、ある程度は」
「大丈夫。送り狼になんかならないよ。会社に告発されて契約打ち切られたら困るし」
「それは説得力あるかも」



