気になるからやっぱり振り返ってみようか。
いや、ここでこの顔を見せると逆効果かもしれない。
通りまであと30メートル。
後ろを歩く人との距離は、もう10メートルも離れていないと思う。
あと20メートル。
大通りまではもうあと数秒だ。
ここまで来れば、きっともう大丈夫。
−−タッタッタッ……。
安心した次の瞬間、背後のウォーカーが走り出した。
危機を感じ、条件反射で後ろを振り返る。
「あ、やっぱり!」
姿を確認するより早く、男の声が聞こえた。
聞き覚えのある声だ。
頼りない街灯に照らされ、ようやく男の顔が見えた。
彼の顔を見た瞬間、安心で緊張の糸が一気に緩んでいく。
「なんだ……山村さんか……」
先日見たのと同じランニングウェアを着ている。
「なんだじゃないよ。こんな時間にこんなところで、しかも一人で何してんの?」
山村がちょっと怒ったように尋ねてきた。
そんな言い方をされると、こちらもつい反発したくなる。



