恐怖から逃れるため、私は無意識に足を速めた。
つけられているような気がするのは、春に原口の一件があったから自意識過剰になっているだけかもしれない。
あの日の嫌な感じはまだ鮮明に覚えている。
大通りはすぐそこなのに、公園は木や柵で仕切られているため、あと70メートルは歩かないと出られない。
とにかく人通りのある早く明るい道に出たい。
足音はどんどん私の方へ近づいている。
ここで振り返って、足音がただの見知らぬウォーカーによるものだと確認すれば安心するのだが、そうでなかった時のことが頭をよぎって勇気が出せない。
舟木に電話する?
いや、まっすぐに帰ると約束した手前、寄り道したとは言いにくい。
それに、舟木に電話で相談したところで、ここまで最短でも40分はかかる。
私に何かあったとしても、彼に守ってもらうことはできない。
つまり、何の安心にもならないということだ。
整形前は夜道でもこんな風に恐怖を感じることはなかった。
当時の私みたいなブスを襲う男なんていないと思っていたからだ。
でも今は違う。
私は自他ともに認める美人だ。
襲われることもあるかもしれない。
美人に生まれ変わったことによる唯一のデメリットだ。



