舟木はそう言って、私の手を引いた。
行き先を察した私の胸が高鳴る。
風呂上がりのいい香り。
セットされていない湿った髪に感じる色気。
今日ずっと意識していたことが、これから始まろうとしている。
寝室は舟木のにおいがした。
空気清浄機がクリーンにしてエアコンが冷やしても、なお主の存在は消えていない。
新田主任とはホテルのベッドしか使わなかったから、ベッドがこんなに相手を感じさせるものだとは知らなかった。
「怖い?」
不安が顔に出ていたのだろうか。
私は首を横に振った。
「ううん。でも私、こういうことするの久しぶりだからちょっと緊張してる」
こんな時でさえ嘘をつけるのだからきっと大丈夫。
機械が作ったクリーンな空気は、あっという間に私の嘘で汚れてしまった。



