彼は私の肩に頭を乗せ、首に唇を触れながら告げる。
「待てない。コーヒーなんて冷めてもいいよ。また淹れる」
淡い刺激がゾクゾク全身に回るけれど、ここは私が余裕ぶって、焦らしたい。
「せっかく美味しいのにもったいないよ。お風呂もまだだし、いったん落ち着いて」
背中をポンポン叩くと、舟木は駄々をこねるように唸った。
「今バタバタ済ませるより、後でゆっくりたくさんしよう?」
「……うん」
私はちゃんと恋愛上級者の女を演じられているだろうか。
焦れている舟木の頬に触れる。
新田主任とは肌の感触が全然違う。
肌だけじゃない。
抱き締め方もキスの仕方も、鼻を掠めるにおいも、全部主任とは違った。
今まで“男なんてみんな一緒”と思って生きてきたけれど、一人ひとり全然違うのだと初めて実感した。
そういえば、手の繋ぎ方も山村とは全然違った。
舟木は良識を心得ているから、電車の中で卑猥なイタズラを仕掛けて楽しむような真似はしない。
ああ、まただ。
こんな時に、他の男のことを思い出している。
頭の中から、山村の記憶だけ消えてなくなればいいのに。



