「真咲がようやく俺のになった」
舟木の幸せそうな声に、胸がチクリと痛む。
私は彼の恋人になったけれど、自分が彼のものになったつもりはない。
それがひどく不誠実であるような気がしたのだ。
「……ふふ、大袈裟ね」
きっと正しい回答は“うん。私はあなたのものよ”だとわかってはいた。
だけど私は、どうしてもそう口に出したくなかった。
唇を触れ合わせる。
彼のことは好きだ。嫌ではない。
直後、無遠慮に舌が侵入すると、私の体は素直に反応し体温を上げた。
生まれて初めての“彼氏”とのキスは、コーヒー味。
新田主任とのファーストキスも、コーヒー味だった。
ファーストキスは甘酸っぱいレモン味だなんて、誰が言い出したのだろう。
私のファーストキスはコーヒー味。
ほろ甘くてほろ苦い、嘘の味だ。
「真咲……」
舟木は今のキスですっかりスイッチが入ってしまったようで、妖しい手つきで私の背中を撫で回す。
私はいったん体を押し退ける。
「待って。せっかくのコーヒーが冷めちゃう」
拒否をするつもりはないし私だってそのつもりで来たけれど、まだ心の準備ができていない。



