キッチンに調理器具はあまり見当たらない。
生活感のあるものはシックなシステムキッチンの棚に収められているようだ。
コーヒーメーカーはよく使うのか、見えるところに置いてある。
全体的に新しくてピカピカだ。
舟木は慣れた手つきで装置に濾紙をセットしたり豆を付属のスプーンで計ったりしている。
私はリビングからその様子を眺め、香ばしいコーヒーのアロマを楽しむ。
もう夜なのにコーヒーを淹れているのは夜を長くするため?
眠くならないようにしているの?
新田主任とは御休憩2時間のお楽しみだった。
彼は家に帰らなければならなかったから、朝まで一緒ということは一度もない。
ここは舟木の自宅。
私たちは恋人同士。
何時間お楽しみが続いたところで料金は発生しないし、終電を気にする必要もない。
明日も休みだから寝坊していい。
“夜は長い”という言葉の意味を、初めて理解した気がする。



