「え……と」
便宜上、私は男たちに実家住まいだと言い続けてきた。
大人になっても父親が厳しくて泊まりはダメなのだと言って、肉体的な誘いを断ってきたのだ。
まだ初デートだし、今日はこの調子でお泊まりを回避しようか。
いや、この恥ずかしさや緊張は、いずれ乗り越えなきゃいけない壁だ。
せっかく準備したのだし、逃げたって仕方がない。
私が答えあぐねていると、ネガティブな返事を予期した舟木はしゅんとした顔になった。
「やっぱり、終電で帰るの?」
長いこと私を口説き続けてくれた彼のためにも、勇気を出して頑張ってみるしかない。
「ううん。家には帰らないって、言ってきた」
舟木の表情がパァッと明るく変わった。
なんてわかりやすいのだろう。
「じゃあ、うち来る?」
「うん、行きたい」
意外と単純でわかりやすい舟木は、すぐにでも私を連れ込みたくなったのか、館内を巡る足を速めた。
そんな彼が可愛くもあるし、滑稽でもある。



