舟木が初めてのデートに選んだのは水族館だった。

涼しげだからという理由だ。

確かに館内は涼しいし、華麗に泳いでいる魚やイルカのショーを見るのもなかなかいい。

けれど私の内心では、この後のことばかり気になっている。

私と舟木は恋人同士。

今日は土曜日で、明日は日曜日だ。

きっと夜には「もっと一緒にいたい」となって、「じゃあどこかに泊まろう」という話になる。

私たちは大人だし、健康な26歳の男女だ。

当然舟木は体を求めてくるだろう。

それが嫌だというわけではない。

私だって、それを想定して準備してきてはいる。

舟木はこれまでの人生をモテながら生きてきたはずだ。

それなりの女性経験があるのも知っている。

だけど私には新田主任としか経験がない。

つまり自信がないのだ。

でもビビッているだなんてバレたくない。