「弦川さん、ちょっといいかな?」

焦った様子の古田所長に声をかけられ、立ち止まる。

「どうされました?」

だいたい予想はついている。

また何か面倒なことを頼むつもりだろう。

「今日、朝礼後すぐに出かけなきゃいけないんだ。会議で使う資料の作成を頼んでもいいかな」

「何の会議ですか?」

「本社の定例会議だよ。詳しくは移動しながらメールで送っておくね」

「わかりました。いつまでに完成させれば間に合いますか?」

「明日使うから、今日中で」

……この野郎、本当は自分で作るつもりだったけど、間に合わないと悟ったから私に押し付けたな。

軽く怒りを覚えるが、笑顔は絶やさない。

「わかりました」

臨むところだ。

仕事も恋愛もステップアップ。

これから私は再び生まれ変わる。