「放して」
「やだね」
山村はきっぱりそう言って手に力を込めた。
抵抗してみるが逃れられない。
幼い頃から疑問に思っていたけれど、自分に自信のある人間って、どうして傲慢に振る舞えるのだろう。
傲慢なタイプの男は今までにも関わったことがあるけれど、相手が山村だと上手く対処できない。
「こんなことして、何の意味があるの?」
「愛情表現だよ」
「本当は好きだなんて思ってないくせに」
「どうして信じてくれないかなぁ」
「いいから放して」
「やだって言ってんじゃん。乗り換えの駅まで放さない」
山村はそう言ってより強く手を握った。
私はまた軽く抵抗するが、満員電車でモゾモゾ動くのを、横にいる中年男性が迷惑そうに咳払いした。
私は仕方なく、本当に仕方なく、彼の手を受け入れなければならなくなった。



