構内にアナウンスが流れ、間もなく電車がやってきた。
当然のように混んでいる。
ドアが開くが、住宅地であるこの駅ではあまり人が降りない。
7月になってから暑さはますます厳しくなったのに、電車もこれなのだからげんなりする。
それでもこの電車に乗らねばならない。
東京の夏は厳しい。
人を押すようにして車両に乗り込み、後の人にグイグイ押され、どんどん奥へと足を進める。
「弦川さん」
山村の声がしたと思ったら、ポールのある立ちやすいところで圧力がなくなった。
山村が私について来て、すぐ横で踏ん張ってくれている。
ドアが閉まり、発車。
車両が揺れて、私たちの距離はすぐにゼロになった。
山村の匂いがして、不可抗力で胸の内側が膨らむ。
鼓動が強くなって息苦しい。
彼とこんな距離で接するのを避けるために早い電車に乗っていたのに、今日は失敗した。
「近いよ。わざと?」
「もちろん」
本当に、この距離はよくない。



