駅への道を歩きながら、舟木とのやりとりを続ける。
【今日も一日頑張ろう】
【おう】
それにしても、世の恋人たちは、時間さえあればこうして恋人と言葉を交わすものなのだろうか。
それとも付き合い始めだけ?
駅に向かう人々の中には、スマートフォンを操作しながら歩いている者も多い。
彼らも私と同じように、恋人とやりとりをしているのだろうか。
26歳にて恋愛経験皆無の私は、恋人のいる生活をどう構築すればいいか、まだわかっていない。
駅に到着。
改札を抜け、ホームのいつも利用するスポットへと向かう。
体がそう覚えてしまっているから、無意識だった。
今日はいつもより遅く家を出てしまい、山村と遭遇する可能性があったのだから、考慮して彼と出会ったスポットは避けるべきだったのに。
それに気づいたのは、私を見つめる彼を目にした時だった。
私は覚悟を決めなければならない。
「おはようございます。弦川さん」
山村は、獲物を見つけた猛獣のような怪しい視線をこちらによこす。
不用意に抗っても意味がない。
「……おはようございます。山村さん」
これまでの人生、神が私の味方をしてくれたことがあっただろうか。
答えがNOであることは明確だ。



