別に、彼氏ができなかったわけじゃない。
一人に絞るのが嫌で、作らなかっただけだ。
作ろうと思えばいつだって作れた。
……というのはもちろん事実だけれど、こんなの、モテない女の言い訳みたいで気に入らなかった。
彼氏くらい、すぐに作れる。
これを証明したい。
『俺も会いたい。仕事、なるべく早く片付けるよ』
「うん」
正直、自分がどれほど彼女を演じれるかわからないけれど、彼の気持ちになら応えてみようと思った。
『じゃあ、また後で連絡する』
「わかった」
今夜、私は舟木の女になる。
記念すべき初彼氏。
『今度、二人で食事しませんか』
『好きなんだよ』
『本当に運命感じるんだよ』
山村の言葉が頭をよぎるが、こんな言葉を真に受けてはいけない。
山村はただ、私と再会したことを特別に感じているだけだ。
それは私も同じだし、さしてロマンティックな運命ではない。
『だってつる子、ブスじゃん』
私たちの運命は、この言葉の呪いで悪戯に交差しているだけだ。



