ベンチの隣。
距離にしておよそ40センチメートル。
もうこれ以上彼と接近することはないのだろうと思うと、ちょっとさみしく感じる。
せめて最後に一回……というのは、イイ女が言うことではないと思ったからやめておく。
疑似恋愛だったけれど、初めて報われた恋だった。
報われただけで実ったわけではないが、彼のおかげで私はステップアップすることができた。
愛ではなく、優越感。
そして奥さんや子供がいても手を伸ばしたくなるほどのイイ女だという自信。
3年間、十分に頂きました。
「今まで、ありがとうございました」
私はそう言って、ミーティングルームを片付けるべくベンチから立ち上がる。
「なあ」
自分が呼び止めたくせに、彼はこちらには目も向けず、真っ直ぐどこかを見つめている。
「何ですか?」
私たちは先ほどの瞬間から、ただの上司と部下。
私はあえて敬語で返す。
「俺が初めてだったろ?」



