「そう言えば、彼」
唐突な話題に、私は首をかしげた。
「彼?」
「オリオンの山村さん」
「……ああ、彼ですか」
彼の顔が浮かんで、自然と体が強張る。
まさかあいつ、変なことを吹き込んだんじゃ……。
「真咲とは近所に住んでるんだって?」
……ああ、やっぱり。
嫌な予感は的中した。
「ええ。たまにコンビニでお会いしますよ」
他に変なことを……特に過去のことを話していないか心配だ。
だけどそれを知るために主任を問い詰めることもできない。
「何となくそう思うだけなんだけど、あいつ、真咲のこと好きなんじゃないかな」
山村に隠す才能がないのか、それとも新田主任が鋭いのか、そんなことまでバレてしまっている。
あるいは、わざと気持ちを悟らせた?
「まさか。どうしてそう思ったんですか?」
「だから、何となくだって」
「そうですか」
私たちは仕事と身体だけの付き合いであって、生活に干渉し会うほどの間柄ではない。
私は都合のいい女でありたいし、彼には都合のいい男であってほしい。
ちょっと特別というくらいがちょうどいい。
お互い求めすぎると火傷してしまう。



