久本と入ったのは、以前も彼と来たことのあるオシャレなカフェバーだ。
仕事だったという設定で彼に会うことは初めから決めていたので、さっき原口と入った店では飲酒を避けた。
「改めて、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
軽めのお酒で乾杯。
失敗を避けるため、私は対外的にはあまりお酒が飲めないということにしてある。
「はい、これ」
雑な感じでラッピングされた小箱を手渡された。
原口がくれたものとは違うジュエリーブランドのロゴが見える。
「もしかして、プレゼント準備してくれたんですか?」
「まあ、一応? 誕生日だっていうから」
久本はツンデレの気があって、本当は私のことが大好きなくせに、そうでないふりをするところが可愛い。
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「好きににすれば?」
彼がくれたのは、小振りなピアスだった。
誕生石ではないところが彼らしい。
「可愛い……! 嬉しいから私、今着けちゃいますね」
喜ぶ時はオーバーに。
「いいんじゃない」
素直でない彼は口元を隠しているけれど、口角が上がっていることはお見通しだ。
「今夜はもうずっと着けてますね。ありがとうございます」
頼んでもいないプレゼントをもらって喜ばれるなんて、美人は本当に素晴らしい生き物だ。



