誰もいない児童玄関で上履きに履き替え、最上階にある4年生の教室へと急いだ。

異常に気付いたのは階段を上りきる前だった。

誰もいないはずの静かな廊下に、不快で不気味な笛の音が聞こえてきたのだ。

私はそれをいつか聞いた怪談と結びつけて、教室に向かうのを躊躇した。

しかしよくよく聞いてみると、メロディーはその日音楽の授業で習ったものだった。

そこで初めて誰かが教室に残って練習をしているのだと悟り、私はホッとしてふたたび教室へと足を進めた。

どうかいつも私の陰口を叩いている嫌な女子ではありませんように。

そう願いながら、ゆっくりと教室の扉を開く。

それと同時に笛の音が止んだ。

教室にいた人物を見て、私は思わず「あ……」と声を漏らしてしまった。

リコーダーの練習をしていたのは、なんと憧れの山村だったのだ。