午後6時半、表参道に参上。
誕生日を共に過ごす一人目の男は、家電メーカーに勤める原口(はらぐち)という年上の男性だ。
彼と付き合っているわけではない。
ただ、私の誕生日を知った彼が自主的に、祝ってくれると言ったのだ。
「真咲ちゃん」
待ち合わせ場所にいくと、先に到着していた彼が手を振っている。
仕事の後というのもあり、スーツ姿だ。
にっこり微笑んで手を振り返す。
「原口さん、こんばんは」
「誕生日、おめでとう。これ、ささやかなプレゼント」
さりげなく差し出されたプレゼント。
小さな紙袋のロゴから、アクセサリーだと思われる。
「ありがとうございます! わざわざ準備してくださったんですね」
喜びのリアクションは少しオーバーなくらいがいい。
「大したものじゃないけどね」
「開けてもいいですか?」
「ここじゃなんだし、店に着いてからにしようか」
原口はいつもスマートで、年上の余裕もあり、ガツガツしていないのがいい。



