全身のいたるところが粟立つ。

とうとう気づかれてしまった。

真実なんかに負けるな、私。

白を切れ。

私が認めさえしなければいい。

山村は“つる子”にたどり着いただけで、私がつる子である証拠はない。

「は?」

私は何のことかさっぱりわからないという風に首をかしげる。

「初めて会ったとき、ビビビッと来た。弦川真咲。どこかで聞いたことのある名前だとも思った」

きっと大丈夫。

認めなければ大丈夫。

自分に言い聞かせるが、心臓は落ち着かない。

山村は続ける。

「つる子のことは覚えてたんだ。だけどあんたに結び付かなかった。つる子は“鶴子”っていう名前だと思っていたし、こんなに華やかな女性というイメージもなかったから」

「あの、さっきから言ってる意味わかんないんですけど」

「間違いない。あんた絶対につる子だ」

「勘違いですよ。私、つる子なんて変なあだ名じゃありません。あなたにも、過去に会ったことはありません」

私はきっぱり言い切ったけれど、手遅れのようだ。

山村はもう、確信している。

「どうしても認めない?」

「認めるも何も、違うんだから仕方がないじゃない」