「私たち、ちょうど散歩の途中だったんです。ご迷惑でなければ一緒にどうですか?」
あかりが満面の笑みで山村に告げる。
やめてよ! こいつと一緒だなんて絶対に嫌!
私の気持ちがまったく無視されることは、初めからわかりきっていた。
「いいんですか?」
山村が嬉しそうに答える。
ダメです! 絶対ダメです!
お願いだから断って。
「もちろん。お話しするなら多い方が楽しいじゃないですか」
それは相手次第。
山村が相手なら、私は全然楽しくない。
あかりも山村も、この状況を面白がっている。
さっきまで結婚のことで泣きそうな顔をしていたくせに、この切り替えの早さと逞しさはすごい。
「ふだん複数の女性をひとりでお相手する機会なんかないので、なんだかドキドキしますよ」
「別にいじめたりしませんよ?」
楽しそうにお喋りを始めた二人。
私は密かに歩幅を狭めて、あえて少し距離を取る。
「あ、こんなところを見られて、彼女さんに怒られたりしませんか?」
「残念ながら、彼女はいないんですよ」
「じゃあ、真咲なんてどうですか? この子も彼氏いないんですよー」
「ははは。実は僕、弦川さんには一度振られてるんです」
「ええっ? ちょっと真咲、本当なの?」
……もう帰りたい。
事情知ってるくせに。
それを聞いて笑い転げていたくせに。



