あかりも同じタイミングで缶に口をつけたが、喉を潤すというより、己を奮い立たせるように一気に煽った。
空になった缶をテーブルに置く軽い音が、静かな我が家に響く。
「もう大体10年くらい、女子高生の頃からリッチな男たちにチヤホヤされてきたんだよ? 毎週のようにフルコース食べて、スポーツカーで都心をドライブして、高級ホテルで朝まで汗だくでセックスして……それでも財布から1円も出て行かない生活をしてたんだよ?」
聞けば聞くほどえげつないが、あかりは本当にそんな生活をしていた。
「そんなあたしが、急に一人の男に縛られて、家庭料理作って、隣の部屋の住人を気にしながらお行儀よく静かにセックス? そんなの無理じゃん? そのうち絶対発狂する」
否定はできない。
一般的に想像される幸せな結婚像からすれば、誰もがあかりには向いていないと言うだろう。
「だから、どうせあたしは発狂する前に浮気とかしまくると思うんだよね。そうなるとさ、旦那が可哀想じゃん。その頃に子供がいたらとか考えると、もう不幸な末路しか見えなくない?」
もしあかりが今まで通り、リッチな男性にチヤホヤされる生活を続けたいと思っているのなら、最初からプロポーズを断っていたと思う。
私が思うに、あかりはただ、自分を変える自信がないのだ。
だから私に背中を押してほしくて、大丈夫って言ってもらいたくて、ここまで来た。
だけど私は、無責任に大丈夫だなんていいたくない。
残念ながらあかりの言い分がもっともだから、どう答えるのが正解なのかがわからない。



