三鷹が会社を辞めてから、一年近くが経ち、ローサが居なくなってから二度目の冬を迎えていた。


すべての出会いには意味がある、よく聞く言葉だけれど、その反対はどうなのだ、と思う。

少なくとも、出会ったばかりの頃は、そんなことを考えないんじゃないかな。

人間の思考回路は都合良くできているんだな、とあらためて思う。


僕とローサの別れにも何か意味があるのなら、いつか、それに気づくのだろうか。

それとも、気づかなくてはならないものだろうか。

そうかもしれない。


ただ僕は、過ぎゆく季節を眺めていただけだったけれど――。




街路樹の灯りの中を、子供たちが走り抜けていった。

集団から少し遅れて僕を追い越していった男の子が、急に立ち止まって空を見上げる。

つられるように僕も空を見上げた。

灰色の笑みを浮かべた空は、その先に在るはずの星を遮っている。


「ほらぁ、はやくぅー!」


その声に視線を戻すと、女の子に手を引かれた男の子が再び走り出そうとしていた。

その光景とは反対に空気は凍えそうなほど冷たくて、僕は何かを掴むように右手をギュッと握り締める。