僕は暫く、彼女から目を逸らす事ができずにいた。

それに気づいたのか、今度は彼女が顔を上げて僕を見る。

さっきとは逆の状態。


そんな目で見ないでくれるかな。

捨てられた子猫か、君は。

それとも叱られた小さな子供? 

いやいや、その正体は酔っ払いでしょう、などと思いながらも僕は彼女に話かけていた。

彼女が可愛かったからとか、カナシミ色に染まった瞳に同情してしまったとかじゃない。

それ以上に、このときの僕はどうかしてたんだ、きっと。


「何?」と短い一言だけを無表情で投げかける。

彼女は何か言いたげながらも、申し訳ないので遠慮します、みたいな表情を今更ながらにしている。

僕は溜息が出そうになるのを感じながらも、少しだけ表情をやわらかくしてから、もう一度問いかけた。


「何?」と僕。


「あっ、えっと……」と彼女。