『こちらの席へどうぞ』


店員の案内で席に着くと、五十嵐くんの座っている席からは、少し距離がある場所だった。



そのことに私は、安堵する。



『心!何にする?』



真理がわざと楽しそうな声で聞いてくれた。



『う…ん…パフェ食べたいかも』


私がメニューを見ながらそう答えた時だった。



パシンッ


店内に乾いた音が響いた。


そして、


『っ!颯太のバカ!!最低!!』


そう言いながら、さっきまで楽しそうに五十嵐くんと話していた女の人が泣きながら出口から出ていった。



な、何…?


どうやら、さっきの音は、五十嵐くんを殴った音のようだ。



ちらりと五十嵐くんが座っている席へと視線を動かすと、頬を撫でている様子が目に入った。



痛そう…



そんなことを考えて憐れみの目を向けていると、



パチッ


顔をあげた五十嵐くんと目があった。