そうして水を飲んだり一応とトイレに行ったりしているとあっと言う間に指示が飛ぶ。
「ファッションショーの出演者は舞台裏に集まって下さい。
付き添いは一人まででーす。」
そんな声がメイク室に響くとゾロゾロと動き出す女の子達。
私も椅子から立ち上がる。
「もちろん俺が付き添い。」
旬は自身を親指で指して言った。
「はーい」
と、想定内のことだったので素直に頷いた。
「俺らは席とりしますよーっと。」
と郁斗。
「まだ空いているかな?」
「いやー、わかんね。
もう30分前切ってるしなー。
ヤバイときはアレだ、
アレ、立ち見。」
「まじか。」
うわー、とかぶつぶつ3人でぼやきながらも会場に向かって言った。
「美里、俺らも行くぞ。」
うん、と私は無言で頷いた。
歩き出したのはいいものの、メイク室を出てすぐは混み合っている。
うわ、地味に旬と離れちゃうよー・・・。
しかも皆背が大きいから埋もれたら終わりだ。
髪がオーマイガーな感じになっちゃう。
私はなんとかスッスッと避けるように頑張る。
そんなことをしているときだ。
グイ、
そんな音がしそうなくらいに手を誰かに引かれた。
「ッ・・・!」
私は声になりそうでならない声を上げた。
私は自分の手を掴んでいる何かを見る。
手だ、人の手。
それも、見覚えのある。
手の甲から腕にかけての浮き出た血管。
そしてこの手の大きさといい、
この強さといい。
完全に、わかる。
顔を見なくてもわかる。
この手は絶対に旬だ。
私は見上げた。
「・・・旬」
やっぱり。
「あぶねぇ。」
そう言って更に私を引き寄せた。
旬が周りの人達を私からガードしてくれている。
これで髪は崩れない。
旬は片手にドレスも持ってるのに・・・。
「ありがとう・・・」
私は旬の凛々しい横顔を見ながら言った。
私の声は周りの喧騒によって掻き消されたけど。
ああ、どうしよ。
旬が眩しい・・・、
かっこよすぎてどうにかなってしまいそうだった、
私の心臓が。


