「・・・」
旬は少し黙り込んでしまった。
「あ、今のは軽く受け流して。
ファッションショー、頑張ろうね!」
私はグッとガッツポーズを旬に見せた。
旬はそのまま頷く。
よーし、やるぞー、
なんて私が気合いを一人で入れている内に耳元に気配を感じた。
耳にかかる、風みたいな・・・。
いや、吐息だ。
私はびっくりして視線を耳元に転じた。
するとそこには旬。
旬が私の耳に唇を寄せている。
・・・えっ・・・?
私は少し動揺して身体がかたくなる。
「・・・羽美の気持ちを考えてるお前も、
十分心が広いと思うけどな。」
そう小さく囁かれた。
ゾクリ、そんな風に背中に何かが走る。
何か、人間の五感じゃ表せない何か。
「・・・え・・・」
私は旬を見上げた。
するとただ力強く頷いてくれる旬。
・・・何で、旬は私をいつも救ってくれるんだろう。
ちょっと私の心に靄ができたら、
その靄を払ってくれる。
励ましてくれるの。
・・・もう、好きだよ。
そんな気持ちが改めて心に広がって、
なんだか胸がキュンと締め付けられた。
「おら、早く行くぞ。」
旬は気を取り直したかのように歩くのを早めた。
今の旬と私の行動は他の3人には気づかれなかったみたいだ。
うん、
と私は頷いて旬の後ろに続いてついていった。
_____
メイク室につくと、
やはり小さな歓声が上がった。
「きゃー・・・!
旬さんと美里さんが隣で歩いてるー・・・!」
「絵になりすぎて辛い!」
「目に優しいなぁ」
と軽くばれないようにしているのであろうが、
カメラを向けられた。
おい、である。
「要路くんカッコイイ!」
「郁斗ぉー!」
「修まじイケメーン」
その中でも3人の歓声も健在だ。
郁斗の人気は一時降下したけど、
修学旅行のバス内でのあの出来事でまた上昇したと見られる。
「テキトーに座れ。」
旬は空いている席を指差して私に促した。
「はーい」
と素直に返事をして私は鏡の前の椅子に座った。


