バクン、バクン。
大丈夫、大丈夫。
私は自分の胸元をさする。
「5秒前ー!」
大丈夫だよ。私。
私はそして一歩踏み出した。
2歩、3歩、4歩・・・
ワーーーッ!
5歩目で、私の耳に響き渡る歓声。
耳が壊れてしまいそう・・・。
耳だけじゃなくて、全身に伝わる。
私の背中を押してくれる音楽。
私を照らしてくれるスポットライト。
私を歩ませてくれるランウェイ。
見たことのない、景色。
こんなに人に、見られたこと、きっとない。
やばい!楽しすぎる・・・!
私は胸をはって笑顔を振り撒く。
体が勝手に動く。
ウキウキがとまんない!
何か、頭がついていかないよ・・・!
私は中央でバッチリポーズを決めてUターン。
意外と、一人一人の顔が見える。
あ、羽美達いるー!
私はきゃあっと叫びたくなったけど、
押し込んでめいっぱい笑って、できるかぎり手を振った。
そして戻ってきて、もう一回スカートをひらりと揺らしてキメポーズ。
そして舞台裏に足を戻した。
「・・・ふほー・・・」
私は息を吐き出す。
軽く拍手してくれる皆さん。
まるで、現実から隔離されたみたいだ。
私はしばらくたちすくんでしまった。
興奮で、足が震えて歩けない・・・。
「・・・って、何ぼーっとしてるの!
次、早く着替えて!」
その声がすぐ近くから聞こえて、私は眠りから覚めたようにハッとした。
影山さんの声。
腕を力強くひかれた。
腕をひかれてやっと意識がかえってきた。
そうだ、何突っ立ってたんだろう。
まだいっぱい出番はあるのに出尽くした気でいた!
着替えなきゃ!
私は咲田としめされたハンガーから服をとりだして着替える。
慌ただしくヘアスタイルをととのえる。
「次美里さん!」
「はい!」
私は高いヒールを履きながらもステージ脇に走る。
そして休む間もなくまたステージへ。
スイッチを入れ替える。
気をいれて!私!
私はまたモデルモードにシフトチェンジしてかつかつとランウェイを歩いた。
そしてまた歓声を浴びた。


